会計・税務コラム

ベンチャー・中小企業のよくある会計・税務Q&A vol.1

2014/1/9

1.備品を購入した時の会計・税務処理

ベンチャー・中小企業であっても、創業間もなくからパソコンやコピー機、デスクやチェアなど、事業を行う上でいろいろな備品を購入することになります。
そこで、今回は、これら備品を取得した場合の会計・税務処理についてまとめました。

2.原則は資産計上して減価償却

パソコン等の備品を取得した場合、原則として固定資産に計上し、減価償却という方法によって各期に費用配分する処理を行います。
ただし、使用可能期間(耐用年数)が1年未満である場合や、取得価額が10万円未満のものについては、減価償却資産とせずに、その全額を一時の費用(損金)として処理することができます(法人税法施行令133条)。
多くの企業では、法人税等の税額軽減効果と固定資産の帳簿上での管理の煩雑さを避けるために、10万円未満の資産の取得については、消耗品費等の勘定科目により費用(損金)処理しているケースが多いと思われます。

3.一括償却資産

原則は上記2の通りですので、10万円以上の備品の購入については資産として計上したうえで、法人税法に定められた耐用年数に従って一定期間にわたり減価償却を行います。
ただし、取得価額が10万円以上であっても20万円未満である場合には、個々の資産ごとに法人税法の耐用年数を当てはめて減価償却の額を計算するのではなく、「一括償却資産」として、一律3年間で均等償却することができます。

4.中小企業の特例(少額減価償却資産の特例)

さらに、一定の中小企業等(※)に限定されますが、取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成18年4月1日から平成26年3月31日までの間に取得して事業の用に供した場合には、その取得価額に相当する金額を全額一時の費用(損金)の額に算入することができます。
この中小企業の特例については、30万円未満であれば無制限に損金算入できるわけではなく、その事業年度において該当する資産の取得価額の合計額が300万円に達するまでという限定があります。

※ここでいう中小企業者等は、青色申告法人であって、以下のいずれかに該当する法人をいいます。

  1. 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
    ただし、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く。)に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除く。
  2. 資本又は出資を有しない法人については、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

5.有利・不利の判断

以上から、中小企業を前提にした場合、備品等の取得についての会計・税務処理には資産の取得価額に応じていくつかの選択肢があることになります。
以下が、もっとも損金算入額が大きくなる、すなわち課税所得が小さくなる選択肢となります(逆に言えば、資産・利益がもっとも少なくなる方法でもあります)。

※下の表は横にスライドできます。

取得価額取得価額 会計・税務処理 備考
~10万円未満 全額を費用処理(損金算入)
(法人税法施行令)
10万円以上~20万円未満 全額を費用処理(損金算入)
(少額資産の特例)
ただし、取得価額の合計が
300万円に達するまでの金額に限る。
20万円以上~30万円未満
30万円以上~ 資産に計上した上で、
法定耐用年数にわたり減価償却を行う

6.会計処理上の留意点

3.一括償却資産や4.中小企業の特例については、法人税申告書上、その明細を「別表」として添付することとなっています。また、中小企業の特例については、総額300万円という制限額に達していないかどうかの判断が必要です。さらに、中小企業の特例については、法人税法上は即時損金処理により資産としては計上されないものの、地方税である固定資産税(償却資産税)の課税対象にはなるため、金額を正確に把握しておく必要があります。
このような観点から、取得時に消耗品費等の費用科目でストレートに処理するのではなく、一旦、「工具器具備品」等の固定資産科目に計上したうえで、決算整理により全額を費用(損金)に振り替える処理をした方が、会計データから履歴が追いやすく、その後の処理が円滑に進みます。

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